バラのある庭づくり

はじめてバラの栽培をする方は、まず初めにどんなバラを育ててみたいのかを挙げてみます。バラと一言で言っても花の色や香り、咲き方など様々に存在しています。また、バラを育てる地域の環境によって「高温に強いもの」「寒冷地での栽培」「病気になりにくいもの」など求める条件があると思います。自分にとって育てやすいバラを絞っていくことから始めてみてください。

バラは、何年も生き続ける植物ですので、長い目で育てていくための強い意志が必要です。 あまりバラ栽培に時間をかけられない方には、近年、病害虫に強く育てやすい丈夫な品種も増えてきていますので、そういった種類のバラを選んで育てるのもよいかもしれません。

バラの苗を選ぶ

バラ苗を購入するには、バラの専門店や園芸店、ホームセンターなどの店頭で購入、インターネットやカタログを利用しての通信販売での購入ができます。
初めてバラ苗を購入する方は、専門家の話を聞きながら助言を受け実際に苗を見ることができる園芸店などでの購入がおすすめです。
ただし、ホームセンターなどでは、品種ラベルがついていない、苗の状態が悪いこともあります。店頭で購入する時も注意が必要です。同じ品種の苗も何個も見比べて元気に見えるもの、品種ラベルがついているものを選びます。

バラの苗には新苗と呼ばれるものと、大苗と呼ばれるものがあります。

【新苗の場合のチェックポイント】
・新芽が出て、枝が伸びているものか、花芽がつかない新梢(枝の上部が切られているものは状態が悪いので注意)
・病害虫がでていなく、病気や害虫による食い荒らしの跡がないか葉の裏も確認。
・枝の節と節の間が短く、全体的に間があいていない。
・葉がたくさんついていて、黄色く枯れていたり、黒く変色していないか確認。
・苗の下にも葉がついている。(下のほうの葉が大きいものは温度を一定に管理して栽培されていたものなので苗としてはしっかりしていないことがあります)

【大苗の場合のチェックポイント】
・1本でも堅く太い枝がある。(枝数が多くても細く柔らかい枝は選ばない)
・芽が膨らんでおり、伸びている。
・樹皮が堅く木化しており、茎が太くしっかりとしている。樹皮や切り口に黒っぽいものがある場合は病気の可能性があるので注意。
・根が見えている裸苗は、根が太く長いか確認。

植える場所・性質

バラの品種は多くて選ぶときに悩むこともあると思います。植える場所や性質を考えて みると悩むことが減るかもしれません。

・植える場所と空間のデザインをイメージ
□鉢植え?庭植え?
□広い庭?せまい庭?ベランダ?
□庭植えならフェンスに沿って育てる?アーチなどにする?

鉢植えならおのずと大きくなりすぎない品種を選ぶと思いますが、広い庭でバラを中心とした栽培を考えている方は、大きく育つ品種も可能です。枝が柔らかくよく伸びる一季咲き性のつるバラも広い面積での栽培に向いています。

・品種の性質を考えて選ぶ
□寒さ・暑さの厳しい地域?風は強い場所?
□日が十分に当たる場所?陰になりやすい場所?
□道路に面している?庭の中心?
□バラの手入れは十分にできる?

育てる環境に合わせて、耐寒性・耐暑性を考えて品種を選び、手入れの時間をあまりかけられない方は、病気の危険を減らすため、耐病性のある品種を選びます。道路や歩道に面したフェンスでは、通行する人が安心できるようにトゲのない品種を選び、心づかいをすることも大切です。

・色合わせ
色に統一感を出したい、カラフルにしたいと考えた時にバラ以外にどんな植物が植えられているか、または植える予定なのかを考えることも大切です。同系色の花や植物を隣にしたり、グラデーションにしたりと具体的にどんな雰囲気の庭にしたいのかを決めるため色彩計画を立てます。

バラの用土

「保水性」と「保肥性」に優れ、「排水性」と「通気性」にすぐれており、ふかふかな団粒構造をもった土が理想的といわれています。
植物を栽培するための土を用土といい、2種類以上の用土に肥料を加えて混ぜ合わせたものを配合土、培養土いいます。

・赤玉土
赤土を乾燥させて、ふるいにかけて細かい塵を取り除いた土です。粒には大きさがあるので、小さい鉢には小粒、大きい鉢には大粒と使い分けます。赤土に比べ排水性、通気性がよいのが特徴です。

・パーライト
火山岩の一種を高温で焼き、多孔質と呼ばれる小さな穴がたくさんある状態にしたものです。土壌の排水性、通気性を良くするのが特徴です。

・ピートモス
水ゴケやスゲ類などの有機物が幾重にも積み重なり、長い時間をかけて分解してできた土のことです。保水性がよく土を酸性にしてくれます。通気性、水持ち・肥料もちがよく、少ししめらせてから使います。

・もみ殻くん炭
お米を収穫した時にでるもみ殻を蒸し焼きにして炭化にしたもので、酸性の土を落ちつかせることができます。通気性がよく、堆肥や土に住む微生物を生き生きとさせ、保温材としても使われています。

バラのある庭づくり~ローズガーデン~

バラの肥料

・有機肥料
動物質・植物質などの生物由来のものを原料とし、落ち葉や稲わら、野菜くず、米ぬか、土、糞尿などを発酵させた肥料です。効き目がゆっくりで、微生物が土の中で時間をかけて窒素、リン素、カリウムなどを含む成分に分解したあと、根に吸収されます。植物の生育に必要な微量要素を含み、土壌中の有用微生物を増やしてくれます。

・化学肥料・化成肥料
化学的に2つ以上のものを合わせ1つにしたり、天然原料に科学的な加工をしたものが化学肥料です。化学肥料の成分が2つ以上含まれたものを化成肥料といいます。 長いこと使い続けると、芽が出ない、葉の緑が枯れてきたりなどの生育障害を起こす原因になります。しかし、栄養がほとんどない土の場合は、有機肥料だけでは栄養を補足することができないため、化成肥料を使うことがあります。

庭植えで大切なこと

バラに限ったことではありませんが、生育がよく、より美しい花を楽しむためには、日当たりと風通しのよい場所で栽培することが大切です。日当たりや風通しが悪い状況だと、病気が出やすくなります。水はけが悪い庭は、地下水の位置が高い土地であったり、粒子が細かすぎる土、粘土質の土壌である、ことなどが考えられます。肥料を多く吸収する植物、病気や害虫に弱いものが同じである植物はバラと一緒に育てることは避けることが大切です。

・バラを育てるためのよい環境作り
□日陰をつくらない(一緒に育てる植物にも注意)
□バラを密植しない(植えつける位置と間隔を考える)
□ 日の当たる場所に植える
□地下水が高い土地は上げ床でカバーする(レンガや石などで花壇を作りその中に土を入れた中に苗を植える)
□ 細かくなりすぎた土に有機物を入れて団粒構造の土にする

バラを育てるために欠かせない作業

①水やり 1年中
鉢植えは定期的な水やりが必要ですが、庭植えのバラは、植えつけから1カ月程度は定期的に水を与えますが、根が活着してからは、定期的な水やりは必要ないので、様子を見ながら行います。新しい芽が2㎝以上伸びていれば根が活着した状態です。株もとにやさしくたっぷりと水を与えます。夏場は朝や夕方の涼しい時間帯に水やりをします。

②ベーサルシュートのピンチ 5月~7月、9月
バラ栽培でシュートとは、新しく出てきた勢いのある若い枝のことをいいます。株もと近くから伸びる枝をベーサルシュートと呼びます。ベーサルシュートは、まだやわらかい時期に枝の先端をピンチします。その後切り口の下の葉からまた新しい枝が伸びてきますので、その枝もほどよい高さになったらピンチします。2~3回ピンチを繰り返すことで枝が強くなり、葉がたくさんつくようになります。葉が増えることで光合成も多くでき、株が充実してきます。

③薬剤散布 3月~11月
病気予防のための薬剤散布は、新芽が5㎝くらいに伸びたころから、1週間に1回程度のペースで殺菌剤と殺虫剤を同時に散布します。葉や枝だけでなく、地面にもかけます。花弁は花色が抜けてしまうものがあるので、花弁にはかからないようにします。予防していても病害虫の被害が起きることもありますので、病気や害虫の痕跡を見つけたらすぐに対処することが肝心です。

④剪定と誘引 9月上旬、1月~2月
立派な花を咲かせるために、剪定は必要な作業です。
樹形を整え、余分な枝や、3年以上経った古い枝を取り除きます。古い枝には貧弱な花しかつかなくなるので、枝の付け根から切ります。余分な枝を取り除くことで、株全体が健康になり、若さを保ち、よりよい花を咲かせることができます。日差しが届き、風通しもよくなることで、光合成が行われやすくなり、病害虫を抑えることにも繋がります。

・夏剪定(9月上旬頃)
四季咲きバラだけに行います。秋の開花時期によい花を咲かせることが目的です。全体的に枝の高い位置で切ります。早めの剪定が必要な品種もありますのでその場合は8月下旬ごろに剪定します。夏剪定の前は、枝が眠ってしまわないように毎日水やりを行い、新芽やシュートが出やすい状態にしておきます。

・冬剪定(1月~2月)
バラの休眠期に行います。春にきれいな花を咲かせるために樹形を整え、株を健康にすることが目的です。枝がたくさん出ていると栄養が分散してしまい、よい花を咲かすことができなくなります。秋に花をつけなかった枝など、不要な枝を取り除き、枝数を減らします。つるバラは木立性のバラよりも早めの12月末~1月に誘引作業を行います。

➄芽かき 3月
バラは、ひとつの節に3つの目ができますが、ひとつの節にひと芽を残すのが基本です。余分な芽を取り除き、樹形を整えることで、枝の日当たりや風通しを良くします。不要な芽を取ることで病気や害虫の予防になり、花つきをよくすることに繋がります。
芽かき:春に出た新芽の中には、花芽がなくいつまでも葉のままの芽があります。また、同じ所からたくさんの芽がでてしまった場合など、良い芽を残して、取り除くことを芽かきといいます。

⑥花がら切り 5月~8月、10月中旬~11月
咲き終わった花を切って、次の芽を育てることが目的です。バラは実をつけるため多くの栄養を使うので花がらをつけたままにしておくと、次の花芽ができなくなります。また、花がら切りが遅いと芽が伸びないことがあり、次の花が咲きにくくなります。秋にローズヒップを楽しむ場合以外は、花が咲き終わったあとそのままにせず、こまめに花殻を摘むようにします。庭や鉢植えに捨てたままにしておくと灰色カビ病が発生し、枝や葉、新しい花に影響が出る原因になります。

⑦寒肥 12月中旬~2月上旬
バラの休眠期に、冬の間に土中で分解され、ゆっくりと効き目がでる有機質肥料を与えます。肥料は与えすぎるとバラが育たなくなるので、年に1回の寒肥を行うだけで十分といわれています。

⑧ピンチ 4月中旬~4月下旬
ピンチとは、おもに四季咲き性の品種の枝先と蕾を摘まみ取ることです。開花を抑えるために、蕾が1.5㎝ほどになったら摘み取ります。新苗や大苗は生長するのに約3年かかるといわれています。まだ若いうちに花を咲かせてしまうと花に栄養が取られ充実した株になりません。栄養を送るためにも新しく伸びた枝は枝先を摘みます。

バラの樹形

「ブッシュ・ローズ」
枝が自立して伸びます。まっすぐに伸びる直立性と、斜め上に伸びる半横張り性があります。樹形は株立ち上になり、四季咲き性のバラが多くあります。株がまとまりやすく、剪定によって短く切りつめることができるので狭い庭や鉢植えでも栽培しやすいです。

「シュラブ・ローズ」
低木から半つる性になるバラで、ブッシュ・ローズとつるバラの中間的な性質を持っています。剪定によっていろいろな楽しみ方が出来るものもあります。

「つるバラ」
枝が長く伸びてつる状になるバラで、壁面やフェンス、アーチやポールなどに誘引して栽培します。枝が細くしなやかなものと、やや剛直なものがあります。つるの長さによって、4~5mまで伸びるバラをクライミング、細くしなやかな枝が10m近くまで伸びるタイプをタンブラーと分けることもあります。よく切れる剪定ばさみを用意します。ただし、芽かき、シュートピンチは手で行います。

植え替えと植え付け

鉢植えでの栽培をしているバラの苗を、別の鉢に植え替えたり地植えにすることはいつでもできますが、地植えで栽培しているバラを植え替えすることは冬にしかできません。冬以外に根が切られてしまうと、根の先端部分にある「根冠」という栄養分や水分を吸収する大切な場所からの吸収が出来なくなってしまうからです。なので冬のバラの休眠期に植え替えをするようにします。

季節に合わせて工夫

・暑さ対策
水やりは気温が上がる前の早朝に行います。ホースの中にたまっている温かい水は一度全部抜き、冷たい水に変わってから水やりをするように気を付けます。暑い日が続く場合には夕方も行うようにします。鉢植えのバラはコンクリートの上ではなく、土の地面に置き、風通しのよい場所を選びます。

・寒さ対策
秋の終わりごろに花を咲かせたあとは、花がらだけを摘み取り、葉を多く残します。葉を多く残すことで、葉の栄養分が枝に渡り、株が充実し冬の寒さを乗り越えられるようになります。肥料を与えすぎると逆に寒さの害を受けやすくなる原因となるため、必要以上に与えないように注意します。
外気温が氷点下になったり、積雪の多い地域では、雪の重みでバラの枝が折れてしまうことがあるので、雪が積もる前に雪囲いを行います。軽く剪定し、枝をひもでまとめてから株の周りに支柱を立ててシートや不織布などで覆います。

・台風対策
台風や急な豪雨や突風などの発生に備えて支柱を立てて誘引します。台風などの通過後は、なるべく早く誘引を取り外します。
鉢植えは、風の当たらない場所に移動させたり、大きい鉢なら前もって倒して横にしておくのもよいと思います。